ある日、信頼していた部下から「自律神経失調症と診断されました」と打ち明けられたら——
あなたはどんな言葉をかけるでしょうか?
リーダーや管理職という立場では、メンバーの体調やメンタル面への配慮が求められますが、自律神経失調症のように「目に見えにくい症状」の場合、どう接すればいいのか迷う方も多いはずです。
この記事では、部下が自律神経失調症になったときに上司としてできること、かけてあげたい言葉、注意すべき対応について、具体的にご紹介します。
自律神経失調症とは?
自律神経失調症とは、ストレスや生活習慣の乱れなどによって自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスが崩れ、心身にさまざまな不調が現れる状態です。
代表的な症状には、
- 慢性的な疲労
- めまい、頭痛、動悸
- 消化不良、胃痛
- 不眠、情緒不安定 など
があります。
見た目では分かりにくく、本人も「怠けていると思われるのでは」と不安になりやすいため、職場での理解とサポートがとても重要です。
NGワード:言ってはいけない言葉
善意で言ったつもりでも、かえって傷つけてしまう言葉があります。以下のような発言は控えましょう。
- 「気の持ちようじゃない?」
- 「甘えてるんじゃないの?」
- 「もっと頑張ればよくなるよ」
- 「みんな忙しいんだから」
このような言葉は、本人のつらさを否定するメッセージになり、信頼関係を損なう恐れがあります。
上司としてかけたい言葉5選
では、どのような言葉が部下の心を支えるのでしょうか?
以下は、当事者から「救われた」と言われることが多かった言葉です。
1. 「まずはしっかり休んでください」
責任感が強い人ほど、「仕事に穴をあけてはいけない」と無理をしがちです。
上司から「休んでもいい」と言ってもらえるだけで、心理的な安心につながります。
2. 「あなたの体調が最優先です」
仕事の進行よりも部下の健康を気遣う姿勢は、信頼関係を築く第一歩です。
3. 「復帰のペースは相談しながら決めていきましょう」
一律の復帰スケジュールを押し付けず、本人の状態に合わせて柔軟に対応することが重要です。
4. 「困ったときは、遠慮せず教えてください」
サポートの意志を明確に伝えることで、「一人で抱え込まなくていい」と思ってもらえます。
5. 「あなたのこれまでの働きはしっかり評価しています」
自律神経失調症になると、自分に対する自信を失う方も多いため、これまでの貢献を肯定する言葉は強い励ましになります。
接し方のポイント
- 「聞く姿勢」を大切にする(アドバイスより傾聴)
- 復帰後も無理のない働き方を一緒に考える
- 就業規則や産業医の支援を活用する
- チーム内に過度に情報を広げない(プライバシー配慮)
自律神経失調症になりやすい人の特徴

1. 真面目で責任感が強い人
- 「きちんとやらなければ」
- 「自分が頑張らないと」
こうした思考を持つ人は、無理を重ねやすく、ストレスを内側にため込みやすいです。まじめで頑張り屋の人ほど、身体が悲鳴を上げるまで気づきにくい傾向があります。
2. 感受性が強く、気を遣いすぎる人
- 周囲の空気を読みすぎたり、人の期待に応えようとしすぎる人は、自分の感情を抑えてしまいがちです。
- 小さなストレスでも積もると大きな負担になり、自律神経のバランスが崩れる原因になります。
3. ストレスにさらされやすい環境にいる人
- 長時間労働、パワハラ、人間関係の不和、介護や育児との両立など
- ストレスの多い環境下では、誰でも心身のバランスを崩しやすくなります。
4. 生活リズムが乱れている人
- 睡眠不足、夜型生活、栄養バランスの乱れ、運動不足など
- 自律神経は「昼と夜のリズム」と深く関係しているため、生活習慣の乱れがそのまま自律神経の乱れに直結します。
5. 女性(特に更年期や月経に関係する年代)
- ホルモンバランスの変化が自律神経に影響しやすいため、更年期やPMSの時期は特に発症しやすい傾向があります。
補足:弱い人がなるわけではない
自律神経失調症になるのは、「弱い人」でも「怠けている人」でもありません。
むしろ、頑張りすぎる人や繊細な人、責任感の強い人がなることが多いのです。
「自分は大丈夫」と思っている人ほど、気づかないうちに限界を超えてしまうこともあります。
【セルフチェック】あなたや部下は大丈夫?自律神経失調症になりやすい人の特徴
自律神経失調症は、誰でもなる可能性があるものですが、特に「なりやすい傾向」を持つ人もいます。
以下の項目にいくつ当てはまるか、チェックしてみてください。
✅ 自律神経失調症になりやすい傾向チェックリスト
- □ 真面目で責任感が強い
- □ 頼まれると断れない
- □ 他人の目や評価が気になる
- □ 何事も完璧にやろうとしてしまう
- □ 怒りや不満を表に出せない
- □ 頭では「休みたい」と思っても、体が動いてしまう
- □ 長時間労働や残業が多い
- □ 仕事と家庭の両立で疲れている
- □ 夜遅くまで起きていて、睡眠時間が不規則
- □ スマホやPCを寝る直前まで見ている
- □ 運動不足だと感じる
- □ 食事をゆっくり取る余裕がない
- □ 最近、疲れが取れにくくなった
- □ 頭痛・めまい・動悸・胃の不調などが続いている
- □ 気分の浮き沈みが激しくなったと感じる
🔍 結果の目安
- 0~4個:今のところ大きなリスクは少なそうですが、ストレスがたまらないよう注意を。
- 5~9個:自律神経が乱れ始めている可能性あり。生活リズムを見直してみましょう。
- 10個以上:かなりの要注意。不調があれば、早めに医療機関や専門家へ相談を。
大切なのは「早めの気づき」と「無理をしないこと」
このチェックリストはあくまで目安ですが、当てはまる項目が多い=心身が無理をしているサインかもしれません。
あなた自身はもちろん、部下や同僚にもこうした傾向が見られたら、「最近疲れてない?」とやさしく声をかけるだけでも大きな支えになります。
まとめ
部下が自律神経失調症になった時に上司としてできることは、
- 焦らせない
- 否定しない
- 寄り添う姿勢を持ち続ける
という、人としての基本的な思いやりです。
立場ではなく「人と人」として向き合うことで、信頼はきっと深まります。
【最後に】部下の不調に心を痛めているあなたへ

もしあなたが今、
「自分のマネジメントが悪かったのかもしれない」
「もっと早く気づいてあげられれば…」
と、自分を責めているのだとしたら――
まずはその思いやりに、心から敬意を表したいと思います。
あなたが「自分を責めてしまう」と感じるのは、部下のことを大切に思っている証拠です。それだけ責任感が強く、思いやりがある方なんですね。でも、その優しさがあなた自身を苦しめてはいけません。
部下が自律神経失調症になる背景には、多くの要因が絡んでいることがほとんどです。職場のことだけでなく、私生活、性格、過去の経験、本人の体調や環境など、複雑に影響しあって起こるものです。あなた一人の責任では決してありません。
そして何より、部下のためにできることは自分を「責めること」ではなく、「そばにいること」「理解しようとすること」です。あなたが悩んだり苦しんだりしている姿よりも、安心して相談できる、落ち着いた存在であることの方が、部下にとってどれだけ支えになるか分かりません。
あなたが今すべきことは、自分をいたわることです。部下を支えるには、まずあなた自身が安定していることが何より大切です。
あなたは今、「寄り添う」という最も大切なことをしています。
それだけで、部下にとっては十分すぎるほど心強い存在です。
上司である前に、あなたも一人の人間。
無理をせず、ご自身の心もどうか大切にしてください。
「一緒に乗り越えていこう」――
その想いが、きっと部下の支えになります。
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